NOUKANO JOURNAL

農業用ハウス 暖房機 比較|能力計算から選ぶ

結論は、方式やカタログ上の適用面積から選ぶのではなく、まず自園の最大暖房負荷を求めることです。そのうえで、燃油温風式はピーク負荷への対応、ヒートポンプは基礎負荷、温湯式は熱の分配という役割で比較します。寒い時間だけ負荷が大きい施設では、ヒートポンプを優先し、不足時に燃油暖房機を動かすハイブリッド方式も有力です。

暖房機を床面積だけで決めると、厳寒時に能力が足りない、反対に大き過ぎて短時間の発停を繰り返すといった不整合が起こります。農林水産省の計算様式では、最大暖房負荷の基本を「温室被覆面積×熱貫流係数×(暖房設定室温-設計外気温)」で求め、1000で割ってkWに換算します。ここで使うのは床面積ではなく、屋根と側面を含む被覆面積です。熱貫流係数は外張り、内張りの資材や層数で変わるため、資材名と施工状態を確認してから計算します。

実際の設計では、隙間換気、風、地中への熱移動、施設形状なども熱損失に影響します。したがって簡易式の結果だけで発注せず、地域、ハウスの間口・奥行き・軒高、棟数、被覆構成、内張り、作型、加温期間、設定温度を施工店へ渡し、採用した設計外気温と補正条件を計算書に残してもらいます。農研機構の暖房燃料消費量試算に関する成果でも、地域の気象、施設形状、被覆資材、カーテンの層数が燃料消費量を左右すると整理されています。

現状の最低室温も確認材料になります。最も冷えた夜について、外気温、暖房設定値、ハウス中央と妻面付近の最低温度、暖房機の連続運転時間を記録します。ただし、設定温度を維持できなかったという事実だけで本体の能力不足とは断定できません。被覆の破れ、内張りの隙間、温度センサーの位置、ダクト配置、機器の汚れでも温度は下がるため、施設側と機器側を分けて点検したうえで更新容量を決めます。

燃油温風暖房機は、燃料を燃焼させて得た熱を温風として送る方式で、施設園芸では主流の方式です。大きな暖房負荷へ対応させやすく、既設の燃料タンク、煙突、ダクトを利用できる更新では構成をまとめやすい一方、燃料価格の変動を受けます。本体比較では熱出力だけでなく、熱効率、燃料消費量、使用燃料、電源、送風量、ダクト接続数を確認します。メーカーが示す標準暖房面積は前提条件付きの目安なので、自園の計算負荷と照合する必要があります。

空気熱源ヒートポンプは、電力で圧縮機を動かして外気の熱をハウス内へ移します。農林水産省のマニュアルは、少ない投入エネルギーで熱を利用できる反面、全暖房をヒートポンプで賄うと導入費が過大になる場合があると説明しています。外気温が下がると能力や効率が変化し、霜が付けば除霜中に暖房が中断されます。比較時は定格能力だけでなく、設計外気温時の暖房能力、除霜条件、消費電力、契約電力、室外機の積雪・排水対策、冷房や除湿を作期中に利用できるかを確認します。

ハイブリッド方式は、通常時にヒートポンプを優先し、それだけでは室温を維持できない低温時に燃油暖房機を併用します。農林水産省のマニュアルでは、ヒートポンプの設定を燃油暖房機より2~3℃高くすることが一般的な運転ポイントとして示されています。ただし、実際の設定差や制御順序は作物、センサー位置、機種で調整し、取扱説明書と施工店の試運転結果を優先します。除霜や室外機停止時に燃油側で不足熱量を補えることも、単独運転と異なる点です。

販売店ごとに異なる条件を渡すと、本体価格も年間費用も比較できません。各社へ共通の仕様書を渡し、最大暖房負荷、採用する設計外気温、設定室温、稼働時間帯、年間の加温期間をそろえます。回答には、選定機器の台数、設計外気温時の供給能力、想定する燃料または電力使用量、試算に用いた単価と気象条件を記載してもらいます。価格が変動する燃料と料金メニューがある電力は、単一の合計額だけでなく、使用量と単価を分けて受け取ると後から再計算できます。

初期費用には、本体のほかに搬入、基礎、煙突、燃料配管・タンク、温風ダクト、冷媒配管、ドレン、電気工事、受電設備、制御盤、試運転、既設機撤去が含まれるかを確認します。ヒートポンプを複数台導入する場合は、既設の受電容量で足りるか、基本料金を含む契約がどう変わるかを電気工事業者と電力会社へ事前確認します。温湯式では、熱源本体だけでなく、貯湯槽、循環ポンプ、配管、放熱器、凍結防止、漏水時の停止方法までがシステムの範囲です。

保守費用は、保証年数だけでは判断できません。定期点検の内容と頻度、消耗品、出張費、繁忙期夜間の受付、部品保有状況、代替機の有無を見積書へ添付してもらいます。既設燃油機を残す場合は、製造年、型式、現在の熱効率、燃料消費量、修理部品の供給可否を確認します。ネポンは施設園芸用温風暖房機について、製造年度別の熱効率と燃料消費量の経年変化一覧を公開しています。既設機の継続使用と更新を比べる際は、このような型式別のメーカー資料と実機点検結果を併用します。

必要能力を満たしても、暖気が届かなければ作物周辺の温度はそろいません。温風式では、ダクト径、穴の向き、分岐数、折れや潰れ、本体から末端までの距離を施工図で確認します。温湯式は放熱器の位置と循環流量、ヒートポンプは室内機の吹き出しと吸い込みが短絡しない配置を確かめます。稼働後は複数地点に校正状態を確認した温度計を置き、同じ時刻の最低温度を比較します。温度差がある場合は、設定温度を上げる前にダクト、放熱器、循環扇、センサー位置を点検します。

室外機は周囲の冷気を再び吸い込むショートサーキットが起きないよう、メーカー指定の離隔を確保します。落雪、積雪、強い季節風、除霜水の凍結、排水先も現地で確認します。燃焼式は、燃焼用空気、煙突と排気、燃料漏れ、可燃物との離隔について施工要領に従います。電気、燃料、煙突、冷媒に関する工事は必要な資格を持つ事業者へ依頼し、生産者が自己判断で安全装置を解除したり、燃焼部や冷媒回路を分解したりしないことが原則です。

加温期前には、燃油機の熱交換面、バーナーノズル周辺、送風機、ベルト、温度センサーを取扱説明書に沿って点検します。ヒートポンプはフィルター、室内外機周辺、排水、配線を確認します。停電時に全方式の送風機や循環ポンプ、制御装置が止まる可能性を前提に、警報の通知先、復電後の再始動、予備機、非常用電源へ接続する負荷を決めます。発電機の容量と接続方法は設備業者に確認し、屋内やハウス内で運転してはいけません。発注判断は、能力計算、同条件見積、保守体制、非常時手順の四点がそろってから行います。

よくある質問

農業用ハウスの暖房機は床面積だけで選べますか?

選べません。屋根と側面を含む被覆面積、被覆資材と内張り、設定室温、設計外気温などから最大暖房負荷を計算します。カタログの標準暖房面積は目安として使い、施工店の計算書と照合してください。

燃油暖房機とヒートポンプはどちらが安いですか?

一律には決まりません。必要能力、年間運転時間、燃料・電力単価、契約電力、工事費、保守費で変わります。同じ気象条件と設定温度で年間使用量を試算し、初期費用と複数年の運転費を分けて比較します。

ヒートポンプだけで厳寒期も加温できますか?

地域の設計外気温、その温度での機器能力、除霜、積雪、必要暖房負荷によります。定格値だけで判断せず、低外気温時の能力表を確認してください。不足が想定される場合は燃油機との併用を検討します。

暖房機を更新する前に何を販売店へ渡せばよいですか?

ハウスの寸法と棟数、被覆・内張りの仕様、地域、作物、作型、加温期間、設定温度、既設機の型式、燃料設備、受電容量、過去の最低温度記録を渡します。各社へ同じ資料を渡すことが重要です。

中古のハウス暖房機を導入してもよいですか?

型式と製造年だけでは判断できません。現在の熱効率、燃料消費、腐食、燃焼・安全装置、部品供給、設置工事と保証をメーカーまたは販売店へ確認し、新品更新との総費用を比較してください。

参考情報

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