ラジコン草刈機 比較は法面の実測から始める
最初に調べるのは機械ではなく、草刈り対象地である。法面ごとに最急部の傾斜、斜面長、進入路の幅、上端と下端の旋回余地、排水溝、石、切り株、支柱、水田への転落箇所を記録する。平均的な傾斜だけでは、短い凹凸や乗り越し時に機体の姿勢が急変する部分を見落とす。スマートフォンの簡易測定だけで購入を決めず、傾斜計などで複数点を測り、雨後にぬかるむ場所も地図へ落としたい。進入できない区画や機体を見通せない区画は、最初から別の作業方法を割り当てる。
農研機構の導入チェックリストは、カタログの最大傾斜度を最も良い条件での値と位置づけ、安全を考慮して少なくとも5度程度、法面によっては10度低く考える必要があるとしている。したがって「最大45度」と表示された機種でも、45度を通常の作業計画値にはしない。湿った土、密生した草、段差、横断方向、旋回動作によって走行性は変わるため、取扱説明書の制限を守り、販売店立会いの現地実演で使用範囲を決める。
対象法面は、機械で作業する区画、既存機と使い分ける区画、作業しない区画の三つに色分けする。機械化できる面積と区画間の移動距離が分かれば、広い刈幅が生きるか、小回りと運搬性を優先すべきかを判断しやすい。農研機構は、事前検討が不十分で運搬の手間に対して作業面積が伸びなかった例も紹介している。法面が点在する経営では、カタログ上の作業速度より、積み降ろしと移動を含む一日の処理面積を重視したい。
公式3機種は刈幅・質量・機体幅で性格が分かれる
公式仕様を同じ欄に並べると、クボタARC-501は刈幅500mm、質量142kg、全幅855mm、公表される法面の刈角度対応範囲は40度までである。ヤンマーYW500RCも刈幅500mmだが、全幅870mm、機体質量はA仕様165kg、セル仕様のAEは170kgで、対応傾斜は左右45度。RCM601は刈幅600mm、全幅975mm、本体乾燥質量240kg、最大作業角度45度である。刈幅600mmは一行当たりの処理幅を増やせる一方、狭い進入路や運搬車両では全幅と質量の確認がより重要になる。
刈高も見逃せない。ARC-501は40・52・64mm、YW500RCは40・55・70mmの3段で、RCM601は50~115mmと公表されている。遠隔操作では刈刃直下の石や地表の起伏を作業者が近くから確認できないため、低刈りだけを選定条件にすると刃や飛散へのリスクが増える。自場で必要な刈高を決め、最初の実演は高めの設定から始める。刈り跡の短さではなく、刈り残し、土の削れ、石への接触、再生までの管理間隔をまとめて評価する。
走行部にも違いがある。ARC-501は4輪駆動で、YW500RCは2モーター2クローラ、RCM601は電動モーター走行と公式に示されている。タイヤ式かクローラ式かという名称だけで優劣は決められない。畦畔の肩を壊さずに旋回できるか、湿った場所で横滑りしないか、狭い上面から安全に法面へ入れるかを実機で確かめる。質量の公表条件も「質量」「機体質量」「本体乾燥質量」と異なるため、燃料、付属品、泥の付着を含む実運用時の重量は販売店へ確認する。
実演は同じ区画・同じ記録票で比べる
候補機の実演には、平坦で刈りやすい場所だけでなく、実際に管理したい代表区画を用意する。事前に石や空き缶などを除去し、動かせない構造物は遠隔位置から見えるよう表示する。比較条件は草丈、地表水分、刈高、試験距離、走行方向をそろえ、開始から終了までの時間を計る。計時範囲には刈取りだけでなく、積み降ろし、区画間移動、燃料補給、清掃も含めると、一日の作業計画に使える数字になる。
運転中は、直進の保ちやすさ、斜面での谷側へのずれ、旋回に必要な場所、草の取り込み、刈り残し、土の削れ、送信機表示の見やすさを記録する。機体からの推奨距離は機種によって異なり、YW500RCは推奨作業距離65mまでとしつつ、必ず機体を確認できる距離から操作するよう明記している。距離の数字を使い切るのではなく、草や地形で刈取部が隠れず、機体の向きと周囲を連続して確認できる操作位置を選ぶ。
安全機能は説明を聞くだけで終えず、取扱説明書に沿って緊急停止、通信が途切れた場合の挙動、再始動、斜面上で停止した機体の回収方法を確認する。作業者は機体の直下や転落予想方向へ立たず、第三者が入らない作業区域を設ける。送信機が防滴仕様でも、農研機構は法面で降雨となった場合、機体を平らな場所へ移して作業を中断するよう示している。故障時に一人で斜面へ入って引き上げる前提の機種選定は避け、販売店と回収手順を決めておく。
購入判断は運搬・保守を含む年間総費用で行う
見積もりは本体価格だけで比べない。本体、送信機、充電器、予備電源、交換刃、運搬用歩み板、固定具、納入指導、初回点検、運賃を分けて記載してもらう。さらに、定期点検、刃やベルトなどの消耗品、燃料、走行用電池、修理時の引取費用について、単価と納期を確認する。公式価格は改定されることがあり、仕様や地域別輸送費でも支払額が変わるため、同じ日、同じ付属品、同じ納入条件の書面見積もりで比較する。
運搬車両は車検証の最大積載量と荷台寸法を確認し、機体寸法・実運用時重量と照合する。単に荷台へ収まるだけでなく、歩み板の耐荷重、積み降ろし角度、固定位置、送信機を持つ作業者の立ち位置まで実演する。農研機構も、機械の大きさや重量制限によって軽トラックで運搬できない場合があると注意している。圃場間を自走させる計画では、移動速度、道路横断の有無、通行者との分離、公道利用に関係する条件を販売店と関係機関へ確認する。
最後に、年間固定費と変動費を合計し、年間の利用可能面積または利用時間で割る。自場で機械化できる面積が少ない場合は、共同利用、リース、レンタル、受託作業も比較対象になる。農研機構が紹介する特定の実証では、ARC-500とKZ-05の作業時間が刈払機に対して71~74%削減された一方、この数値を別機種・別法面へそのまま当てはめることはできない。自場実演で得た総作業時間を使い、軽労化、安全な作業位置、繁忙期の人員配置まで含めて導入効果を判断する。